モノに溢れる現代社会。
「メイドインJAPAN」という言葉はブランド戦略となるほどのパワーワードですが、実際のところ海外プロダクトと質を比べてみても、日本のものづくりのレベルの高さは世界トップレベルですよね。
しかしながら、モノに溢れてモノに使われ…そんな生活に疲弊している人々がいるのもたしかです。
そんな生活から解放されたい想いが「ミニマリズム」というムーブメントにつながっているのではないでしょうか?
今はミニマリスト・インフルエンサーさんたちがいらしゃって、ミニマリストながらも個性的な生活をしていらしゃる方々をSNS等でたくさん見かけますよね。
でも現実的にそんな極端な生活を誰でも送れるわけではありません。
じゃあ、ちょうどいいミニマリスト生活って何か?
その答えは我々日本人の歴史を振り返れば見えてくるかもしれません。
今回は、江戸時代のミニマリズム生活について深掘りしていきます。
ミニマリストとは?
そもそもミニマリストとは、どんな人なのでしょうか?
単に物を減らす人ではなく、自分にとって必要で大切なものを見極め、シンプルで豊かな暮らしを目指す人です。
その思想は、時間やお金、精神的な余裕を得たい現代人にとって大きな魅力を持っています。
現代でミニマリストが注目される理由
デジタル時代のシンプルライフ
まずはこの理由が一番大きいと考えられます。
あらゆるシーンのデジタル化によって物理的なモノが不要になり、シンプルな生活が実現しました。
物があふれる時代だからこそ、物を厳選して選び思考をスマートにしていく「こんまりさん」のライフスタイルが注目されました。
また消費を抑えることで、地球環境への負荷を軽減しようとする動きも注目される理由の一つでしょう
江戸時代の人がミニマリストだと言われる理由
金の屏風に花魁、歌舞伎が栄えた江戸時代のどこがシンプルなの…?
と思う人もいるかもしれません。
それはおそらく、江戸前期〜中期をイメージされる方が多いからでしょう。
江戸時代は天下泰平が260年も続いた時代。
260年も続けば、豪華絢爛に贅沢を嗜む時期もあれば、貧困や禁令に苦しむ厭世の時期もあるのです。
江戸のミニマリズム観が一般に広まるのは、江戸後期にあたる「化政文化」の時代だと推測します。
江戸時代後期というのは、前期〜中期で花開いた贅沢で豪華な生活は堕落を招くとして幕府から贅沢禁止令が出た時代。
江戸の人々はその禁令を逆手にとって、シンプルで合理的な暮らしの中に魅力を見出していくのでした。
それが、江戸時代の人々がミニマリストだったと言われる理由ですね。
江戸時代のミニマリズム生活
化政文化の時代には、生活の質を重視した、シンプルで合理的な暮らしや持続可能性の観点から、現代のミニマリズムに通じる要素が多く見られます。
以下に具体的な理由を挙げて解説します。
限られたスペースでのシンプルな暮らし
江戸の庶民の多くが住んでいた長屋は狭く、収納スペースも限られていました。
このため、家具や道具を必要最低限に抑え、コンパクトで機能的な生活を送っていました。
徹底したリサイクルとレンタルの文化
使い捨ての概念はなく、壊れたものを修理したり再利用するのが当たり前の「もったいないの精神」。
衣服は繕い、道具は修理し、最終的に布は雑巾や紙の原料に変わりました。
「古着屋」「紙屑買い」「下駄直し」など、リサイクル業が盛んで、持続可能な経済が成立していました。
また、狭い住居を効率的に使うため、共同利用が一般的でした。
例えば、風呂や井戸を共有することでスペースや資源を節約していました。
他にも「損料屋」というところで、ふんどし、布団、手ぬぐい、浴衣、冠婚葬祭や旅行で使う様々なものを借りて使っていたそうです。
質素な生活から生まれた美学
質素で無駄のない美を尊ぶ「侘び寂び(わびさび)」の思想が、日常生活にも反映されていました。
また、浮世絵や北斎が描いた漫画など、庶民でも手頃な値段で楽しめるサブカルチャーが発展しました。
さらに、江戸の人々は「物を買う」よりも、祭りなどの「体験」を楽しむ傾向がありました。
これは、現代のミニマリストが「物より体験」に価値を置く姿勢に通じます。
まとめ
結果として江戸後期には、日本の歴史の中で最も「日本人らしさ」が濃縮されたアートや文化が花開いた時代と言っていいでしょう。
ミニマリストのライフスタイルが江戸の庶民の感性を磨いていたのだろうと思います。
また江戸時代の暮らしは、現代のミニマリズムに非常に似た要素を持っていました。
しかし、これは意識的な選択ではなく、環境や社会的な制約が生んだ結果でもあります。
それでも、持続可能で無駄のない生活の知恵は、現代にも学ぶべき点が多くあると言えます。
モノを持たないシンプルで粋な文化がもっと広まるといいなと思いました。
それはある種、日本人が日本人に原点回帰するということ。
私たち日本人の文化的遺伝子が本来持っている心地よさに触れることは、「生きやすさ」にもつながるのではないでしょうか。